第7回(5月27日)から第9回(6月10日)までは「インターネットと現代文化」をテーマに話を進めていきます.キーワードは電子メール・電子掲示板とWWW,テキストサイトと2ちゃんねる,ウェブログ,CGM/UGCと集合知,YouTubeとニコニコ動画,ソーシャルメディア,です.
1. ネット文化の担い手は誰だったのか
- ネット特有の文化が成立するプロセス(ばるぼら)
- ネットらしさ=「ネット的」
- ネット的な態度・気分が生み出した文化
- 米国のハッカー文化
- 1960年代のヒッピー文化と「カウンターカルチャー」
- 「DIY(Do It Yourself)」文化
- ネットの設計・運用のあり方(思想)
- 設計面では…
- オープンなネットワーク環境
- 反「囲い込み」
- SNSは「半分」ネット的
- 運用面では…
- ユーザの自主性
- 「名乗り」の自由度
- 双方向性
- 情報の自由度
- 設計面では…
- ネット的な態度・気分が生み出した文化
2. ウェブ1.0の時代(1990年代)
- インターネットが社会へ普及する代名詞「ホームページ」
- パーソナルかつデジタルな情報「発信」の手段
- メディアの持つ潜在力は「双方向性」/可能的様態(水越伸)としては「単方向?」
- 「テキストサイト」と「個人ニュースサイト」
- 「発表」することへの欲求と満足
3. ウェブ2.0の時代(2000年代)
- ティム・オライリー(考案者)と梅田望夫
- ティム・オライリー(2005年)「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」(CNETによる訳文)
- 梅田望夫『ウェブ進化論』(2006年)(「(知の)高速道路と大渋滞」梅田氏のブログによる2004年12月6日付記事)
- 「残念な日本のウェブ」(ITmediaによる2009年6月1日付記事)
- 集合知の空間
- Wikipedia(ウィキペディア,2002年夏頃に日本語対応)(→UGC/CGMへ)
- ウェブログ(Weblog)の登場と「ブログ論壇(ブロゴスフィア)」への期待
- はてなダイアリー(2003年3月)/ココログ(2003年12月)
- 「コメント」と「トラックバック」による双方向コミュニケーション
- 日本のウェブにある(あった)「ウェブ日記」文化
- 電子的な公共圏の形成という理想(あるいは夢想)
- ネットにおける情報流通の変容(加野瀬未友によるised@glocom(情報社会の倫理と設計についての学際的研究)倫理研第4回の講演録,2005年5月)
- UGC(User Generated Content)/CGM(Consumer Generated Media)化するウェブ
- 2ちゃんねる/ニコニコ動画/YouTube
- ウェブ2.0時代のアイドル「初音ミク」(2007年8月発売)
- Google ChromeのCM
- UGCの「C」は集合知の「知」
- 「みんなで作ったコンテンツは(案外)面白い」
- Content(s)からCommon(s)へ/Commons-based peer production(ヨハイ・ベンクラー)
- みんなで(peer)コンテンツを作る場=CGM
- CGMの「C」はConsumer(消費者)だが生産=消費者(Prosumer, プロシューマー)化する
- 『アーキテクチャの生態系』(濱野智史)
- 擬似同期(ニコニコ動画)と選択同期(Twitter)
- 濱野智史(2008)アーキテクチャの生態系マップ
- 「発表」から「参加」へと欲求・満足が変化
- その萌芽は90年代末からゼロ年代初頭にあった
- 「<つながり>の社会性」(北田暁大)と「ネタ的コミュニケーション」(鈴木謙介)
- 2ちゃんねるのアイロニズム(冷笑主義)と「内輪の空気」の維持(北田)
- 次のコミュニケーションへと接続するためにコミュニケートする(鈴木)
- 「終わりなき」参加=<つながり>のゲーム
- Google + Amazon = Googlezon(グーグル・アマゾン化する社会)
4. リアルタイム・ウェブの登場とソーシャルメディア化へ(2010年代)
- SNS(ソーシャルネットワークサービス)
- Facebook(フェイスブック)/mixi(ミクシィ)/Twitter(ツイッター)
- 津田大介『Twitter社会論』
- 「名乗り」によるアイデンティティ問題
- 「コミュニティ」か「クラスタ」か
- Facebook(フェイスブック)/mixi(ミクシィ)/Twitter(ツイッター)
- ウェブの「24時間営業」化=リアルタイム・ウェブ
- ソーシャルメディア化するウェブ
- あらゆるウェブ・サービスが統合されていく
- ウェブのコンテツを「共有(シェア)」して「共感(いいね!)」しよう
- ウェブの未来または「アプリ化」するインターネット
5. まとめ
ウェブをめぐるアーキテクチャの進化
(画像をクリックすると大きいサイズで表示されます/印刷用PDFはこちら)
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- (第7回)Web1.0(それ以前の「0.x」の時代から)ソーシャルメディア化した現在までのウェブの歴史は,ウェブを象徴するキーワードが「表現」から「参加」そして「共有(共感)」へと変化していった歴史でもある.
- (第8回)2000年代(ゼロ年代)のウェブ文化は,UGC=みんな(User(s))で「参加して」作り上げる/盛り上げる(Generated)コンテンツ(Content(s))が中心のものとして捉えられる.これらのUGCを支える「場」がCGMである.CGMは「参加のアーキテクチャ」により構成され,その場でわたしたちは,消費者(Consumer)ではなく生産=消費者(Prosumer)になっていく.
参考文献(このレジュメからリンクしたもの以外)
- Hillery, G.A.Jr (1955) Definitions of community: Area of agreement. Rural Sociology, 20.
- 川上善郎・川浦康至・池田謙一・古川良治(1993)『電子ネットワーキングの社会心理』誠信書房
- ハワード・ラインゴールド(会津泉訳)(1995)『バーチャル・コミュニティ』三田出版会
- 村井純(1995)『インターネット』岩波新書
- 浜野保樹(1997)『極端に短いインターネットの歴史』晶文社
- 村井純(1998)『インターネット2―次世代への扉』岩波新書
- 加藤晴明(2001)「コンピュータ・コミュニケーションのメディア文化」『メディア文化の社会学』福村出版
- 喜多千草(2003)『インターネットの思想史』青土社
- ティム・バーナーズ=リー(高橋徹監訳)(2001)『Webの創成―World Wide Webはいかにして生まれどこに向かうのか』毎日コミュニケーションズ
- ばるぼら(2005)『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』翔泳社
- 山形浩生監修(2006)『あたらしい教科書(9)コンピュータ』プチグラパブリッシング
- 三浦麻子(2008)「インターネット革命―私たちのコミュニケーションを変えたもの」橋元良明編著『メディア・コミュニケーション学』大修館書店
- 大向一輝・池谷瑠絵(2012)『ウェブらしさを考える本―つながり社会のゆくえ』丸善ライブラリー
- 粉川一郎(2012)「ネット空間の中の私たち」矢田部・山下編『アイデンティティと社会心理』北樹出版
- 杉本達應(2013)「文化としてのコンピュータ―その「柔軟性」はどこからきたのか」飯田豊編『メディア技術史』北樹出版
- 杉本達應(2013)「開かれたネットワーク―インターネットをつくったのは誰か」飯田豊編『メディア技術史』北樹出版
- 粉川一郎(2013)「ネットコミュニティのプロデュース」中橋雄・松本恭幸編『メディアプロデュースの世界』北樹出版
- 村井純(2014)『インターネットの基礎―情報革命を支えるインフラストラクチャー』角川学芸出版
- ばるぼら(2014)「日本のネットカルチャー史」川上量生監修『ネットが生んだ文化―誰もが表現者の時代』角川学芸出版