ケータイ教室を参観しました


先日,息子が通う小学校の参観日だったので行ってきたのですが,息子のクラスとは別のクラスにてケータイ教室が実施されていましたので参観しました.

「教室」自体はKDDIが主催し,講師を派遣して実施している「KDDIスマホ・ケータイ安全教室(青少年向け講座)」です. 1)当日は派遣されてきた講師の方が20人ちょっとの生徒たち(6年生)を相手にレクチャーされていました.

内容は大きく3つのパートに分かれており,

  1. スマホへの重課金と依存の問題
  2. インスタント・メッセンジャーによるコミュニケーションの齟齬の問題
  3. 「なりすまし」と個人情報保護の問題

これらの問題への対処法について学ぼうというのが教室の趣旨だったと思われます.具体的な内容について述べる,というよりワタシ個人がメディア研究に携わる者として考えたことを書いていきます.

スマホへの重課金と依存の問題

スマホを子どもに買い与える親としてもさすがにアプリ課金についてパスワードでロックすることで対策をとっているのですが,このパスワードの強度がダメダメだったため子どもにたやすく破れられてしまいます 2).課金はカード決済で行うので月末あたりにカード明細が親元に届きバレる,という展開でした.

自由に課金できるとなればソシャゲもやり放題,大好きだったクラブ活動もおろそかになり,睡眠時間もどんどん削っていって...というお決まりの展開になっていきます.

事の顛末を一通り動画で視聴した後,講師は子どもたちに「なぜこうなった?」と原因を話し合わせ,いくつかの意見を述べさせた後,「正解」を解説するわけですが,要約すれば「スマホの課金は親の財布から出しているの同じ,君(子ども)のおこづかいではない.だから課金する前によく考えよう」となります.スマホ代については通信料は親持ち,アプリ課金などは子どものこづかいから支払う,というケースもあると思いますが,多くの場合料金をカード決済する都合,通信料もアプリ課金の料金も親が支払っていると思われます.またスマホ利用に依存することで学習を含む他の生活時間が削られてしまうことも問題となるわけです.講師側からは親子でのルール作りについても言及されていました.

個人的には親子での密な話し合いによるルールづくりを進める一方,(残念なことですが)ルールは破られるだろうとの観点からアプリ課金をできないよう,OSレベルでのロックをかけることが必要でしょう.料金支払をプリペイドカードでやってみるのもいいかもしれません.つまりはアーキテクチャ的な管理方法です.

あと余談ですが,親側からするとスマホはあくまで「親子の通信手段」であるとの認識が強く,スマホが通信だけでなくゲームなどの娯楽や友人・知人とのコミュニケーション手段でもあるとの認識は薄いことが多いので,この点,認識を改める必要があるでしょう.

インスタント・メッセンジャーによるコミュニケーションの齟齬の問題

続いての内容はインスタント・メッセンジャー(LINEを想定している)の利用において,ちょっとしたコミュニケーションの齟齬に起因する問題について取り上げていました.メッセンジャーではテキストが主体のコミュニケーションを交わしていくわけですが,いくら絵文字やスタンプを利用するとはいえノンバーバル・コミュニケーションの特性がほぼ失われている以上,意思伝達に齟齬が生じやすいのは仕方ないところです.

大人ならばそこは上手く行間や文脈を読んで対処できるのでしょうが,子ども相手ならばそうもいかないのでしょう.ちょっとした行き違い程度ならまだしもそれがイジメに発展する可能性もあるわけです.

さて教材となる動画ではこういった事例を紹介した後,子どもたちへの問いかけをやり,正解を示したのですが,こちらを要約すると「ノンバーバル・コミュニケーションの特性がほぼ利用できない以上,即レスや控え,常にコミュニケーション相手と自分との関係性を確認していこう」となります.

即レスをやめることで相手から受け取ったメッセージの内容について,その相手との関係性がどんなものであるのか(相手が親友なのか,それほどでもない知人なのか)を判断材料のひとつとしつつ,できるかぎり齟齬が生じないようにコミュニケートしていこうよ,ということなのでしょう.ただしこれは大人でも難しいわけで,子どもにとっても極めて高いハードルとなっていくことでしょう.これについては成功と失敗を繰り返しながら学んでいくほかないのだろうと,メディア研究者としては弱気な意見を示しておきます.

「なりすまし」と個人情報保護の問題

最後のパートの内容は,オンライン上で知り合い,オンラインだけでコミュニケートしていた相手が実は変質者が「なりすまし」たものであり,そのことに気づかないままオフラインで会うことになり,あやうく連れ去られるところだった(たまたま担任の先生と出くわしたので難を逃れた)という状況が動画で提示されていました.

オンライン上でのコミュニケーションの多くが顕名(ハンドルネーム)を通じてやり取りされるものであり,また仮にそれが実名を通してのものであってもオンライン上の「実名」が現実社会での(オフラインでの)「実名」と必ずしも一致しない場合はありうるわけです. 3)

このことに気づかないまま「なりすまし」の相手と親交を深め(た気になっている)つい個人情報を漏らしてしまうことになりかねません.教材では自分の「自撮り」画像を送ることで画像ファイルに添付されたGPS情報から自宅の位置を割り出されてしまいました.

こういった問題への対策は,個人情報をいかに相手に伝えないか,少なくともオンライン上でしかコミュニケートしたことの無い相手には絶対伝えてはならない,といった態度で望むかしかありません.自分自身が注意しているつもりでもスマホのカメラアプリが撮影時に自動的にGPS情報を取得し,画像ファイルへ添付する設定になっていることに気づかないケースも想定できます.またメッセンジャーを通じたちょっとしたやり取りから個人情報を特定されることも考えられます.もうこれは子どもだけでなく親も一緒に考えて対策していく必要があるでしょう.

結局,どう対応すればいいのか

対応としては親子で話し合いながら運用方法を決めていくほかありません.そのためにはスマホの扱い方をOSレベル,そして個々のアプリの動作レベルで熟知しておく必要があるでしょう.今回,教材を眺めていて思ったのは,少なくとも自分が使うスマホの動作や機能,それらの設定方法についてある程度の知識があれば回避できるものばかりだということです.またそういった知識の習得が子どもだけでは難しい場合,親や教師が子どもの理解度に合わせて翻案し伝えてやればいいでしょう.なんでもかんでも親や教師が一律にルールを決めて運用してもいいのでしょうが,それでは本当の意味でのメディアリテラシーは育たないと思います. 4)自分が使う道具がいったい何なのか,どういった設定をすれば,どういった動作をするのか(してしまうのか)これを学習して初めて,どういった運用をルール化していくのか,親子で話し合えるのだと思います.

 

 

[注]

  1. いくつかコースがあり今回は中級コースの内容でした.
  2. 生年月日+名前という組み合わせだった.ぎゃふん.
  3. 画面上に表示される「実名」が,コミュニケーション相手が使用する端末(スマホやPC)の利用者/所有者の実名とシステム上紐付けられていなくとも,オンライン・コミュニケーションが可能な場合がほとんどです.
  4. アーキテクチャ的解決策としてはそれでいいんでしょうけど.