パラグラフ・ライティングの効果

※ このページの引用・参照元:井下千以子(2013)「思考を鍛えるレポート・論文作成法」慶應義塾大学出版会,p.86-p.90(4-1.  の例文を除く)
※ 「良いパラグラフ」の例文はコチラ

1. パラグラフを構成する3つの要素

  1. トピック・センテンス(topic sentence)
  2. 支持文(support, supporting sentences
  3. 結びの文(concluding sentence)

2. パラグラフ・ライティングの注意点

  1. ひとつのパラグラフには,トピック(話題)はひとつだけ
  2. トピック・センテンスでは,トピックを示すとともに,書き手の主張や考えを明確に示す.
  3. 支持文により,トピック・センテンスの主張を裏付ける
  4. トピック・センテンスと結びの文の冒頭には,つなぎとなる言葉(接続表現)をつける.
  5. トピック・センテンスは,パラグラフの冒頭に持ってくるのが望ましいが,論理の流れによって,末尾に置くこともできる.

3. パラグラフ・ライティングの効果

  1. トピック・センテンスを読めば,そのパラグラフの話題が明確にわかる
  2. 次に続く支持文が主張を裏付け,サポートの役割を果たす.
  3. 適切なつなぎの言葉を使うことで,パラグラフが連結し,パラグラフ内もパラグラフ間も論理の流れが一貫し,論理的な構造を明確に示すことができる.

4. 効果的なパラグラフ・ライティングの例

まずは,以下の文章を読みましょう.この文章は3つのパラグラフから構成されています.

 大学生は,生涯発達心理学における発達区分からすると青年期に位置するのだが,実は,青年期は,人間の一生涯において,子ども期を終えた人に必然的に訪れる一時期というわけではない.他の動物にも,太古の人間にも,生物学的に若い時期というのはあるが,青年期はそうした生物学的な発達段階を示すものではない.たとえば,文化人類学者のミードは南太平洋にある島国サモアに住む若者には心理的葛藤や不適応はほとんど見られないとし,文明社会のあり方が青年の不安を作り出したと指摘した.とすると,青年期は歴史的社会的背景のもとに誕生した「近代化の産物」ということになる(遠藤,2000).

 たとえば,デービス(1944)は青年期について次のように述べている.

青年期は身体的発達と社会的発達とのズレがはじめて顕著になる時期である.社会が複雑になるにつれて,このズレは大きくなり,社会的に定義された青年期が生物学的大人期まで入り込んでくる.

 つまり,青年期にある若者は身体的にはすでに大人になっているが,社会が複雑になると大人になることが先延ばしされるというのである.たとえば,わが国の進学率の推移をみても1950年代から1980年代に掛けて高校への進学率は40%から98%まで急激に増加しており(天野,1992),学校教育によって社会によって働き一人前になること,すなわち大人になることが先延ばしされていることがわかる.さらに,大学がユニバーサル型に移行することによって,学校基本調査によると,大学進学率は2009年には5割を超えた.これにより,大人になることはさらに延ばしされるようになった.

本来はパラグラフなので途中で改行はしません.ここでは同じ文章をわかりやすく説明するために,文ごとに改行を入れて,再び読んでみましょう.

<第1パラグラフ>
  1. 大学生は,生涯発達心理学における発達区分からすると青年期に位置するのだが,実は,青年期は,人間の一生涯において,子ども期を終えた人に必然的に訪れる一時期というわけではない.
  2. 他の動物にも,太古の人間にも,生物学的に若い時期というのはあるが,青年期はそうした生物学的な発達段階を示すものではない.
  3. たとえば,文化人類学者のミードは南太平洋にある島国サモアに住む若者には心理的葛藤や不適応はほとんど見られないとし,文明社会のあり方が青年の不安を作り出したと指摘した.
  4. とすると,青年期は歴史的社会的背景のもとに誕生した「近代化の産物」ということになる(遠藤,2000).

<第1パラグラフ>の構造

  1. トピック・センテンス —> 話題:青年期とは/主張:人間の一生は必然的に訪れるのではない.
  2. 支持文(その1)
  3. 支持文(その2) —> たとえば

つなぎの言葉:とすると

  1. 結びの文

<第2パラグラフ>

  1. たとえば,デービス(1944)は青年期について次のように述べている.
  2. 青年期は身体的発達と社会的発達とのズレがはじめて顕著になる時期である.社会が複雑になるにつれて,このズレは大きくなり,社会的に定義された青年期が生物学的大人期まで入り込んでくる.

<第2パラグラフ>の構造

つなぎの言葉:たとえば

  1. トピック・センテンス —> 話題:青年期とは
  2. 支持文 —> 引用箇所

結びの文は無し

<第3パラグラフ>

  1. つまり,青年期にある若者は身体的にはすでに大人になっているが,社会が複雑になると大人になることが先延ばしされるというのである.
  2. たとえば,わが国の進学率の推移をみても1950年代から1980年代に掛けて高校への進学率は40%から98%まで急激に増加しており(天野,1992),学校教育によって社会によって働き一人前になること,すなわち大人になることが先延ばしされていることがわかる.
  3. さらに,大学がユニバーサル型に移行することによって,学校基本調査によると,大学進学率は2009年には5割を超えた.
  4. これにより,大人になることはさらに延ばしされるようになった.

<第3パラグラフ>の構造

つなぎの言葉:つまり

  1. トピック・センテンス —> 話題:青年期とは/主張:社会が複雑になると大人になることが先延ばしされる.
  2. 支持文(その1) —> たとえばすなわち
  3. 支持文(その2) —> さらに

つなぎの言葉:これにより

  1. 結びの文

「つなぎの言葉(接続表現)」や支持文の冒頭表現にはいろいろありますが,こちらのWebサイトの内容が参考になるでしょう.

論文はどんな日本語で書かれているか?アタマとシッポでおさえる論文らしい文の書き方

(出典:「読書猿Classic: between / beyond readers」2013年10月26日付け記事)


4-1.【参考】良いパラグラフの例

 民主主義にはどうしても直接民主制に向かう傾向がある。つまり、主権者である民衆は、自分は政治的決定を直接に行う権利をもつと考えがちなのである。こうして、より多くの者が決定に参加することは、それだけで望ましいことだと思われるようになる。

このようにして、直接民主制が絶対的に正しい決定のあり方だと思われると、世論調査が政治の動向や政治的決定を左右する最も大きな要因になってくる。これは原子力発電所の誘致やダム開発、その他の公共事業の継続をめぐる近年の政策決定の過程を見れば明らかだろう。政治家や官僚など公的な立場にいる者の施策が、じかに世論に左右される事態が生じている。いったいどうしてこのようなことになるのだろうか。

最もはっきりとした原因は、民衆はおおむね健全な判断力をもつと考えられている点にあるだろう。国民の教育水準が向上し、政治家や官僚との教養における差が縮まれば縮まるほど、直接民主制や住民投票を求める声が強くなることが、その証拠として挙げられる。

出典:戸田山和久(2012)『新版 論文の教室』NHKブックス(NHK出版), p.190-p.191

4-2. トピック・センテンス/支持文/つなぎの言葉,に注目してみる

<第1パラグラフ>

  1. 民主主義にはどうしても直接民主制に向かう傾向がある。
  2. つまり、主権者である民衆は、自分は政治的決定を直接に行う権利をもつと考えがちなのである。
  3. こうして、より多くの者が決定に参加することは、それだけで望ましいことだと思われるようになる。

<第1パラグラフ>の構造

  1. トピック・センテンス —> 話題:民主主義とは/主張:直接民主制に向かう傾向がみられる
  2. 支持文 —> つまり、
    • 主権者=民衆
    • 民衆は政治的決定を直接に行う権利をもつ(と考えがち)

つなぎの言葉:こうして

  1. 結びの文 —> より多くの者(主権者=民衆)が(政治的)決定に参加=望ましい状態

<第2パラグラフ>

  1. このようにして、直接民主制が絶対的に正しい決定のあり方だと思われると、世論調査が政治の動向や政治的決定を左右する最も大きな要因になってくる。
  2. これは原子力発電所の誘致やダム開発、その他の公共事業の継続をめぐる近年の政策決定の過程を見れば明らかだろう。
  3. 政治家や官僚など公的な立場にいる者の施策が、じかに世論に左右される事態が生じている。
  4. いったいどうしてこのようなことになるのだろうか。

<第2パラグラフ>の構造

つなぎの言葉:このようにして

  1. トピック・センテンス —> 話題:直接民主制と世論調査/主張:直接民主制が絶対的に正しい場合 —> 政治の動向・決定を左右する最大の要因は世論調査
  2. 支持文(その1) —> これは
    • 原子力発電所の誘致やダム開発、その他の公共事業の継続をめぐる近年の政策決定の過程を見れば明らかだろう。
  3. 支持文(その2) —> 政治家や官僚など公的な立場にいる者の施策が、じかに世論に左右される事態が生じている。

つなぎの言葉:だろうか

  1. 結びの文 —> このようなこと(世論が直接に政策・施策を左右する事態)がなぜ生じるのか

<第3パラグラフ>

  1. 最もはっきりとした原因は、民衆はおおむね健全な判断力をもつと考えられている点にあるだろう。
  2. 国民の教育水準が向上し、政治家や官僚との教養における差が縮まれば縮まるほど、直接民主制や住民投票を求める声が強くなることが、その証拠として挙げられる。

<第3パラグラフ>の構造

  1. トピック・センテンス —> 話題:「このようなこと」が起こる原因/主張:民衆はおおむね健全な判断力をもつと考えられていること
  2. 支持文 —> その証拠として挙げられる
    • 国民の教育水準の向上 —> 政治家・官僚と教養における差が縮小 —> 直接民主制・住民投票を求める声が強くなる

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