【KG奥野ゼミ向け】スライド作成/アイデア作成・整理/三角ロジックの方法


これは関学社会学部・奥野ゼミ(3年)で2016年4月26日に実施する実習に向けた資料です.

1. きょうの目的

きょうの実習の目的は,「論理的な」つまり読み手を説得できる文章を書くため,あるいは聞き手へ効果的に伝わるプレゼンのスキルを学ぶこと,です.ただしきょうは,来る5月10日のゼミで実施する,図書館での調査実習の後に取り組むレポート課題をどうやりとげるか,このことに集中してやっていくつもりです.

2. Tipsやハックはすでにあるリソースを使い倒す

レポートの作成(ライティング)やプレゼン(特にスライド作成)のやり方(技法)について,書籍やネット上のWebサイトも含めたくさんあります.そういったリソースを使い倒し,あとは「場数を踏む」 1)ことで上達していくのが面倒なようで一番の近道でしょう.

2-1. プレゼン編

ここではそういったリソースの中から「使える」ものをいくつか紹介します.プレゼンに関しては,とりあえず以下のものをおさえておくと,伝わりやすいスライドを作成できます.


見やすいプレゼン資料の作り方-リニューアル増量版(Yuta Morishige氏作成スライド)

もちろんこちら以外にも使えるリソースはたくさんありますが,Tips(チップス)やハックにこだわり続けることが目的ではありません.まずはこちらをふまえてスライドを作成し,何回かプレゼンを実施した後で,別のリソースを探すなり,自分なりのTipsを編み出していけば良いのです.

他のリソースも読んでみたい,学びたい,という方へはこちらの書籍が役立つでしょう.

ここまでに紹介したリソースは,プレゼンの主にスライド作成の技法を重視したものです.一方で,発表する際にはどうすればいいのでしょうか.(これは個人の経験上の考えですが)次に挙げるポイントを守ると比較的上手くプレゼンできるようです.

  1. スライドは見ない(スライドを映写しているスクリーンに顔を向けない)
  2. 発声は(自分が思う以上に),大きく,ゆっくりと声を出す
  3. 視線は会場全体をゆっくりと見渡す(「Z」の字を描くように)
  4. (少しくらいなら)アドリブで話しても構わない

2-2. ライティング編

ライティングに関しては以下の2冊をおさえておけば授業での課題レポートから卒論まで,全てをカバーできるはずです.

ここに挙げた文献以外にも紹介したいリソースがありますが,これは別の機会に実習としてまとめて学習しましょう.

2-3. アイデア作成・整理編

スライドを作成する,あるいはレポートを執筆するためのアイデアがまだまとまっていない方は,以下に挙げる方法を試してみましょう.すでにある程度をアイデアがまとまって,頭の中の整理ができている,という方はここは飛ばしてもらって構いません.

  • マインドマップ(やり方の説明, http://goo.gl/CqPJfo)
  • KJ法(やり方の説明, http://u-labo.org/wp/archives/682)

参考になる文献

マインドマップやKJ法に取り組む際に読むと役立つ情報源です.

  • マインドマップ
    • トニー・ブザン(近田美季子訳)(2013年)『新版ザ・マインドマップ』ダイヤモンド社
    • 松岡克政・木全賢(2010年)『マインドマップ デザイン思考の仕事術』 PHP新書
  • KJ法
    • 川喜田二郎(1967年)『発想法』中公新書
    • 川喜田二郎(1970年)『続・発想法』中公新書
  • 番外編
    • 原尻淳一(2011年)『アイデアを形にして伝える技術』講談社現代新書
    • (雑誌)日経ビジネスアソシエ(定期的にロジカルシンキングやノート術の特集あり)

ソフトウェア

マインドマップ作成用のソフトウェア/アプリはたくさんありますが,いまのところ,Windowsユーザは「XMind」(https://jp.xmind.net)か「Freemind」(http://osdn.jp/projects/freemind/),MacOSユーザ(マカー)は「XMind」か「MindNode」(http://mindnode.com/)を選択すれば間違いありません.

KJ法に関してはこれといったソフトが見つかりません(いいのがあれば教えてください).

3. ロジカルシンキングとしての三角ロジック

3-1. 主張+根拠+論拠=三角ロジック

2. で紹介したリソースたちから学べることはいわゆる「技法」,スキルの面です.スキルを学ぶのはとても大切なことですが,そもそも自分の主張したいことを論理的に相手に伝えることが,レポートやプレゼンの目的だったはずです.論理的に物事を考えるスキルを「ロジカルシンキング」と呼びますが,今回は数多くあるロジカルシンキングのなかでも「三角ロジック」について説明します.

三角ロジックについて,まずはこちらの資料を読んでください.資料を読みましたか?今回のゼミで取り組むレポート課題の内容は以下のものです.

  1. 自分が興味・関心をもつ社会文化現象に関連する情報源(リソース)を検索する
  2. 1. で得られた成果をふまえ,自分が取り組みたい研究テーマあるいは研究仮説を考える

1. で検索した成果はせっかくですのでリスト化しましょう.(課題の条件にあるように)社会学で一般的なやり方でリスト化します.『社会学評論スタイルガイド』に準拠したリストを作成します.詳しいやり方は日本社会学会Webサイト(http://www.gakkai.ne.jp/jss/bulletin/guide.php)で公開されています. 2)

2. については,先日配布したレジュメでは「研究テーマあるいは研究仮説を考える」とありますが,この際両方考えましょう.5月末のゼミから各自のゼミ発表が始まります.ここではどのような研究テーマにもとづいて仮説を考えたのか(さらに仮説を検証するための調査方法まで)を説明することになっていますから,今の段階で仮説の構築にチャレンジしておくと後々の作業が少し楽になります.

3-2. 三角ロジックの基本の「き」

三角ロジックの基本は次のモデル図を見てください.

卒業研究のための三角ロジック・モデル図
卒業研究のための三角ロジック・モデル図

先ほど読んだ資料にある「主張」を,このモデル図にある研究仮説に置き換えてみます.すると主張の裏付けとなる「根拠」は仮説の検証に必要なデータ 3)と置き換えられますし,根拠が主張の裏付けとなる理由の「論拠」は研究テーマに関する先行研究(の成果) 4)として置き換えられるでしょう.

それでは具体例を考えてみましょう.

【研究テーマ】高校生の趣味縁を拡大するICT

研究仮説=主張
高校生は中学生と比べると,趣味を通じた友人関係をICTを活用して,より広げたいと考えている.
根拠
ベネッセ総合教育研究所が,2014年に全国の中高生を対象として実施した調査結果(「中高生のICT利用実態調査 2014」
  • 「インターネットで知り合った人・友達」の有無を尋ねている.
  • この質問項目では「趣味のつながり」を前提とした友人・知人の有無を尋ねている
  • 友人・知人が「いる」割合は中学生(50.2%)より高校生(56.6%)が高い.
  • その中で実際に会った人がいると答えた割合は中学生(27.6%)より高校生(41.5%)が高い.
  • 10数ポイント(13.9%)も差がでている.
  • 上記の事柄は「第61回 デジタルネイティブ世代の「つながり」とは?-「中高生のICT利用実態調査2014」より-」という記事を参照した.
論拠

社会学では若者の友人関係を趣味のつながり=「趣味縁」から考察した研究がある.

  • その研究は浅野智彦(2011)『若者の気分―趣味縁からはじまる社会参加』である.
  • その中では,ICTにより濃密化・拡大化する若者の趣味縁にもとづいた友人関係を「社会関係資本」と捉え,これは若者たちが社会生活を円滑に送るために欠かせないものである,と述べられている.

この三角ロジックは作成例としてわかりやすく示すため,根拠となるデータはすでに実施された調査結果を参照・引用しています.したがってみなさんの場合は,仮説を検証するために必要なデータをどうやって収集するか,調査プランを考える必要があります.作成例に即していえば,実際に複数の高校へ質問紙調査を依頼・実施する(→量的調査),高校生のインフォーマントを集めてインタビュー調査を実施する(→質的調査),といった調査プランを考える必要があります.

3-3. 三角ロジックを取り入れたスライドの構成

この章の最後に,三角ロジックを取り入れたスライドの構成=アウトラインはどういったものが考えられるか,構成案をひとつ示して締めましょう.前提として,三角ロジックの構築ができている,つまり研究テーマを決め,研究仮説を設定し,必要な調査は実施済みであり,根拠となるデータおよび論拠となる先行研究の整理が終わっているとします.

  1. 研究テーマの紹介
    • 研究の動機/目的/基本情報を提示する
  2. 研究仮説(三角ロジックの「主張」)の提示
    • シンプルな言葉で,わかりやすく書く
  3. 調査データの説明(三角ロジックの「根拠」)
    • 調査対象/手法/結果を提示する
  4. 調査結果の考察(三角ロジックの「論拠」)
    • 先行研究とつきあわせながら考察を展開する

ここで示したものはおおよその構成ですので,実際にスライドを作成するにあたってはこれらに表紙(タイトル)や参照・引用文献なども追加する必要があります.したがってスライドの枚数が4枚で終わることもありえません. 5)

4. 調査データ/メモ/スライドやドキュメントの作成・整理・保存

これからプレ段階も含めて調査を実施していくわけですが,作業を進めていくと,たくさんのデータを収集することになります.また研究テーマや研究仮説に関するメモがどんどん増えていきます.さらに研究の進捗状況や成果を発表するため,スライドを作成したり,レポートを執筆する機会も多くなります.

このような情報は個別のファイルとして作成,保存するよりは,できる限りクラウド上に保存しておくことを推奨します,クラウド上に保存しておくことで,整理がやりやすくなり,ネットワーク環境があれば,いつでも・どこでも読みだして,内容を修正・更新することもできます.教員や他のゼミ生との情報共有も格段にやりやすくなります.

これから紹介する各種クラウドサービスは基本は無料で利用できますが,少しお金をかけることで,ぐっと利用しやすくなるものもあります.今回は紹介するだけにとどめておきますので,詳しい利用方法やメリット・デメリットについてはGoogle先生あたりに質問してください.

これらのクラウド・サービスは専用のクライアント(アプリ)をインストールすると使いやすさが向上しますが大学のPC教室の環境では無理なので,Webブラウザ経由で利用することになります.

[注]

  1. つまり,何本もレポートを書いて,添削してもらい(そして書き直す),何回もプレゼンを実施してツッコミを入れてもらう(そしてスライドを作り直す),ことでしか上達しません.
  2. まずは「4 文献」を読めばひと通りのやり方がわかるはずです.
  3. データは自分自身で調査して収集する必要があります.また複数のデータが必要となる場合,一部は先行研究で示されたデータを引用・参照することもあります.
  4. 論文や書籍に加え,必要があれば先行研究で示されている数値データやエスノグラフィー/フィールド・ノートを引用・参照します.
  5. ただしプレゼンには持ち時間が設定されていますので,持ち時間を勘案して参照・引用文献のリストや補助的な図表などは別途印刷して配布することを考えましょう.

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