(研究者である)親のペナルティは可視化されうるか


とある女性研究者のツイートを読み、ちょっと唸って考え込んでしまったのでした。彼女のツイートは公開されているのでここで引用してもいいかもと思ったのですが、内容が内容だけに止めた方がいいかもと判断しました。

そのツイートの主旨をワタシなりの理解でまとめると、

  • 男性研究者が子どもを設けても研究における生産性は下がっていないケースがある
  • 一方、女性研究者は生産性が下がるおそれがあるため、それを回避する策を講じねばならない
  • 男性研究者はそういった対策を取らない(人もいる)

であると思われます。ここから推測するに男性研究者の場合、育児に対するエフォートが低い場合でも、研究の生産性が下がらず、アウトプットが出せれば(エフォートが低いことは)非難されないからではないでしょうか。とくに男性研究者が大学や研究機関の正規の被雇用者であり、かつ配偶者が「専業主婦」である(無職ないし非正規雇用職に就いている)ケースでは、そうでない場合に比べ、男性研究者が育児に関わる度合いが低いように感じています。

理由をアレコレ考えてみるのですが次のようなことではないかと思います。

  1. 研究活動を続けることで他者からの承認を得られる可能性が向上する
  2. 研究活動と他の活動の切り分けが難しい

1.について。研究者として自分が属するコミュニティ(大学や研究機関、学会・研究会など)における他者承認は研究成果を出すことに他なりません。つまり研究活動を続けていくことで(他者から承認される)可能性が向上しますので、育児活動に割り当てられる時間や労力は少なくなります。これは次に述べる2.とも関連しています。

2.について研究活動は(研究者の仕事は)他の仕事と異なり「今日はここまでやれば終わり」というラインが見えづらい、あえて見ようとしないものでないでしょうか。他の仕事では労働時間が明確に決められている(サービス残業とかの問題はここでは考えないこととします)ため「仕事をしない」時間が生まれます。一方研究者の仕事は「裁量労働」でありますから、やろうと思えばいくらでも研究活動に時間や労力を割り当て可能です。現実的には授業や校務にも時間と労力を取られますから、ますます自分の「裁量」として育児より研究活動を優先させていくことになるのではないでしょうか。

実はもうひとつ理由を考えてみたのですが、それは「男性研究者は性別役割分業意識が強い女性と結婚したいと(意識的に、または無意識のうちに)考えている」なんですが、これはさすがに根拠を挙げずに述べるには、トンデモすぎるので却下します。

仮にここまで述べたことが正しいとすれば、女性研究者が(子どもを持つ)男性研究者に対して不満を抱えるのは自然なことでしょう。これは何も研究者である女性にかかわらず、社会一般において強く意識される不満のようです。

共働き社会化は「幸福格差」をもたらす可能性もある。子どもを持つ夫婦と子どもを持たない夫婦の幸福度のギャップは「親ペナルティ」と呼ばれ、一般的には子どもを持つことによって幸福度は下がるとされている。

情報源: なぜ日本では「共働き社会」へのシフトがこんなにも進まないのか?(筒井 淳也) | 現代ビジネス | 講談社

冒頭に紹介したツイートのような不満を抱えている女性研究者が多いとすれば、それを解消するためには、まず男性研究者の育児活動についてきちんと調査されるべきだと思います。昨年(2016年)下記に紹介している文献が刊行されましたが、いま研究者をめぐる育児問題について、よりフォーカスを当てた研究が必要です。つまりそれは「〈オトコの『研究者』の育児〉の社会学」なのです。