ライティングの授業を担当する


※以下は自分用のメモです※


後期(秋学期)の授業開始がだいたい1ヶ月後に迫ったきました.なので少しメモを作っておきます.私の場合,ライティングの科目を担当していますが 1),講義科目でも成績評価にレポートを取り組むようにシラバスを設計しています.講義科目の場合は,レポート一発で成績を付けることがないように(救済的な意味も少しありますが)学期中に複数回の小課題の提出を求めています.それらの課題は以下の内容にしております.

  1. 三角ロジックを作成する
  2. 三角ロジックから「主題文」を作成する
  3. 1.と2.を踏まえてアウトラインを作成する

これがライティング科目になると,論証型レポートを作成するというプロセスにそれぞれタスクとして位置付けており,このタスクたちをクリアしていくことで最終的にレポートが作成できる(はず)ようになっています.

三角ロジック

ここで三角ロジックとあるのは,トゥルーミンの「三角ロジック」のことです.議論の技法として著名でありますが,レポートやプレゼンなど,自らの主張をロジカルに構築する際によく使われるものです.私自身が授業で説明するに適した内容と思うのが,早稲田大学の向後千春先生が作成された教材です 2)

三角ロジックの基本形

三角ロジックは「主張 <– –> 根拠 <– –> 論拠」という基本形を作るところから始まります.主張については,作業開始前にテーマとして複数の「お題」を提示しておきます.当然テーマは少し漠然としているので,「主張」にするには,少し自分のアイデアを付け足す,もしくは削り出していかなくてはなりません.そういった作業を「アイデア出しと整理」と名付けており,これがレポートやプレゼン作成のファースト・ステップとなります.

マインドマップによるアイデア出し

アイデア出しの手法も複数ありますが.学生へは「マインドマップ」か「KJ法」のいずれかをやってみるように勧めています.ただしKJ法はその出自を考えると,ゼロから何かを生み出すよりは,すでにバラバラとたくさんあるデータから共通項を見出すことに特化しているように思え,数年間の試行錯誤を経て,実際のクラスではマインドマップをやらせることが多くなってきています.

根拠を考える

主張を決めることができれば,その主張の正しさを示すために「根拠」を考えなくてはなりません.実際には根拠となりうる情報を収集,評価していく作業となります.これは主張から根拠を導き出す,とも読めるのですが,一方で,まず根拠が先に存在していて(わかりやすく言えば根拠となる情報をすでに収集済であるということ)そこから「主張」(主張として言えること)を考える,というやり方もあります.実際に,テーマを設定したら先に根拠を収集,それを整理,評価する作業を通して具体的な「主張」を組み立てる,そういった作業プロセスを設定しているライティング科目が結構あると思われます.

私自身は,正直なところ,こちらの方向性が適切ではないかという思いは捨てきれないのですが,授業を進行させやすい,また多様な学部から履修してくる学生のことを思い,教師からの指示として「まずは主張を考えよう,主張を考えたなら,それに見合う根拠を探してこよう」と言っています 3)

論拠を考える

トゥルーミンの三角ロジックの考え方では,主張と根拠のペアだけではダメで,根拠が主張の「裏付け」となる,根拠が根拠として成立する理由を説明しなくてはなりません.この理由(となる情報)が「論拠」です.私は,この論拠について自分が立てた主張や,その背景にあるテーマに関連した先行研究(書籍や論文といった文献に加えて信頼できると思われるWeb上の情報)を使うことを勧めています.つまり,根拠自体を論拠となる先行研究によって解釈し,その解釈をもって,根拠を主張の裏付けとなる理由としよう,ということになります.

三角ロジックの完成

三角ロジックが完成した時点では 4)「主張 <– –> 根拠 <– –> 論拠」という構造を三角形の図に書いています.あわせて主張,根拠,論拠の各パーツでは,箇条書きふうにそれぞれの内容を簡単に記載しています.ここまで作業を終えた時点でレポート執筆やプレゼン作成の作業の半分程度は終わったとみてよいだろうと考えており,学生たちにもそのように説明しています.

三角ロジックの強度

実は,向後先生が作成された教材を読むとわかりますが,三角ロジックはただ完成させただけでは,本当に論理的かどうか少し弱い面があって,三角ロジックの強度をさらに上げていく必要があります.件の教材では自分が作った三角ロジックの根拠または論拠に対して,反対 5)および再反対するという手法が解説されています.言い換えると,自分自身で「ツッコミ」を入れ,そして自分自身から「ツッコミ返す」ことでロジックの強度を上げようということになります.

私が担当する授業では,三角ロジックの強度を上げることについては,プレゼンの授業では必ず反対と再反対を考えるように指示していますが,ライティングの授業では努力目標にとどめています.一度は義務付けてみただのですが,やはり三角ロジックそのものを考えるよりも難易度のレベルが上がるのか,指導が大変でした.もちろんこれは教師の指導方針に問題があるので,私自身のFDとしてこれから改善していきたいところです.

主題文

学生たちが作成した三角ロジックは,手書きで作成した場合は主張・根拠・論拠の各パーツを頂点とする三角形(もしくはそれっぽい)図形になっていることが多く,またワープロやテキストエディタを使い,PC上で作成した場合は,それぞれのパーツに該当する内容を箇条書きにしていることが多いようです.このままアウトラインの作成に取り掛かってもよいのですが,作成できた三角ロジック自体が少し冗長な表現となっているので,より主張・根拠・論拠の流れを読みやすくしてやります,つまり視覚的な情報の正確が強い三角ロジックを文章化して「読みやすく」するのです.ここで次のステップとして「主題文」の作成に入ります.

主題文とは,学生たちへ私の授業で参考テキストとして紹介している井下千以子先生(桜美林大学)の『思考を鍛えるレポート・論文作成法』(2013年,慶應義塾大学出版会)では以下のように紹介されています.

主題文(thesis sentence)とは、レポートで自分が主張したいことを簡潔に述べた文章です。アウトラインを作成するのではなく、いきなり、文章にするのは難しいのではないかと思う人もいるかもしれません。

実際に、ある程度レポートを書き慣れている人で、レポートの論理構成が頭に入っているのであれば、キーワードを階層的に並べ替え、アウ トを トラインを書くことも難なくできるでしょう。

しかし、レポートを書くことが初めてという人にとっては、また、日頃、本をあまり読まないという人は、論理を構成するというイメージがわかず、キーワードをどう並べて階層化するのか、あるいは、見よう見まねでアウトラインを作成しても、その後、どう文章化したらよいのか、 何から書き出したらよいのか、その段階でつまずいてしまいます。

でも、大丈夫!

主題文は、レポートの目的を、頭の中で整理し、それを文章にすることによって、論理を組み立てていくプロセス、考えるプロセスを支援してくれる役目を果たします。

出典: 井下千以子(2013)『思考を鍛えるレポート・論文作成法』慶應義塾大学出版会,p.47

私の場合,井下先生のやり方を自分の授業に合わせて変えております.詳しくは別の記事を読んでもらうとして,要約して言えば,三角ロジックを主題文というかたちで文章化してやろう,ということになります.

参照:主題文を作ろう

主題文を作成した後は,いよいよアウトラインの作成に取り掛かります.

アウトライン

レポートを実際に執筆する,つまり文章を連ねていくまでに至る最終段階がアウトラインの作成でしょう.

アウトラインの作り方も教師や研究者によって様々な方法が提唱されていますが,私は,学生たちが考えた三角ロジックをベースにテンプレートを埋めるやり方でアウトラインを作成するよう,勧めています 6)

ここでアウトライン自体の説明と共に,レポートや論文における「章立て」について説明することが多いです.そこでは章・節・項が単なるパラグラフの集まりではなく,パラグラフ(群)同士の論理的なつながりを表していることを,つまりレポートは論理的に構造化された文章であることを理解して欲しいのですが,教師としての力量不足もあって,なかなか上手くいきません.

これは全くの実感レベルでしかないのですが,アウトラインを作成してからレポートを執筆すると,いわゆる「コピペレポート」が大きく減ったようです 7).またレポート自体のクオリティも向上していると思われます.

主題文とアウトラインのピア・レビュー

私が担当するライティングの授業では,授業で作成した主題文やアウトラインを,学生同士でピア・レビューしています 8).ピアでレビューする目的は,学生たちが作成した主題文やアウトラインをブラッシュアップするためです.学生が作成したものに対し,教師から一方向的にコメントを付けることもできるのですが,同じ授業を受けている学生同士でそれをやる方が効果は高いようです.

ピア・レビューをやる「場所」には,教室(つまりオフラインで)やLMSやウェブ掲示板を利用してきました.レビュー後の振り返りや,そもそもレポートをPCで執筆しているので,できればオンラインで,できる限り機会を多くしてレビューをやってみたいのですが,なかなか上手くいきません.

学生たちはオンラインで協同作業をやる,ということには慣れていないのかもしれません.もっともこれは学生たちの資質というよりは,教師がどうノセていくか,にかかっているところが大きいと思います.何か良い手段はないかと模索中です.

参照:学習者の(オンライン)コミュニティを盛り上げるのは難しいのか

ピア・レビューといった協同作業を通じて,学生たち(と教師やLAが参画する)コミュニティ,いわゆる「ラーニング・コミュニティ(学びの共同体)」を構築できないか,これがここ数年の私の(研究者および実践者としての)課題です.

ひとまずのまとめ

アウトラインが完成すれば,いよいよレポート本文を執筆する段階に入ります.授業ではパラグラフ・ライティングのやり方や,文献を引用する際のルールなどを資料を示しながら教えております.ただし,レポート本文の執筆とそのピア・レビュー,再修正に時間をかけているため,こういった細かい話を時間をかけてやれていません.ここもなんらか改善していきたいところです.

実はこの記事を書くためにもう2週間ぐらいダラダラと書いては消し,を繰り返しており,いいかげん放出しなくてはと思います.まだまだ不備なところが多いのですが,いずれ稿を改めて書いていきたいと思います.

ここまでお付きあいくださった方へ,誠にありがとう.

 

[注]

  1. もっとやりたいので講師の口を募集中です.
  2. 4.2 トゥールミンの三角ロジック
  3. 少し誤解を与えかねない指示かもしれず,ここはきちんと言い方を考えないといけません.また先に根拠となる情報を収集してくる学生もいるので,それは別段咎めることなく作業を進めさせています.
  4. 実際には,レポートを書き進めている,またはプレゼンのスライドを作成している途中で三角ロジックを少し修正するケースはありえます.
  5. 具体的には「反駁」「質疑」「反論」の3つがありますが,後述するように,私が担当する授業では反駁または質疑を考えるようにと指示しています.
  6. アウトラインのテンプレートは,先ほど紹介しました井下先生のテキスト,そのp.52にあるものを改変して使っています.
  7. 体感レベルではほぼゼロになったと思います.
  8. 場合によっては教師またLA(Laerning Assistant)がレビュアーになります.