角川インターネット講座『ネットコミュニティの設計と力』を読む(承前)


本書は刊行前情報を得た時点からそこそこ期待しておったわけですが.近藤氏の序章,yomoyomo氏の第1章,広井センセの第5章を読んだところで,手が止まってしまいました.

社会学/メディア研究の専門書ではないので,そもそもの本書が提示する方向性と私が期待していたそれとがズレていた,ということなのでしょう.

とはいえオンラインコミュニティのあり方について,文字通り「設計」の面からわかりやすく書かれていると思われます.ですので授業レポートや卒業論文あたりでオンラインコミュニティを取りあげるつもりの大学生には最初の一冊としてよろしいのではないかと.

最終章にあたる第6章「コミュニティと人の力」(近藤淳也)にある一節が引っかかりましたのでここに引用します.

「リアルでないと得られないもの」をリアルな世界で得つつ、「ネットを使わないと得られない共感」をネットを使って得ているのだ。

この節は著者がネットに対してやみくもに否定したり,また強く肯定しすぎることを避けたい(意味が無いとして避けている)彼自身の態度表明であるようです.

これを,私自身は.自己承認欲求をどう満たすかという問題へ言い換えられると考えています.つまり自己を承認してもらうための,承認をしてくれる(してくれそうな)相手に対して示す「ネタ」(=経験であったり,情報であったり)を探し,入手するための空間がリアル空間であります.そして実際に自己承認を得る(著者が言うところの「ネットを使わないと得られない共感」)場所として機能するのがネット空間なのです.

したがって著者の言うとおりどちらかの空間に肩入れし過ぎてしまうと本来の目的である自己承認を得られづらくなってしまうおそれがあります.

この記事にオチはないのですが,他人の言うことをなんでもかんでも自己承認欲求の問題にすり替えてしまうのは確かによろしくないですね.